相続分

共同相続人は、その相続分に応じて、被相続人の権利義務を承継(民899条)しますので、相続分は重要です。

指定相続分(902条)

指定相続分とは、被相続人が遺言で指定した相続分のことです。相続分の指定や指定の委託は遺言でしかできません。

通常遺言は、特定の遺産を、特定の相続人に相続させる趣旨で行われますが、この趣旨の遺言は、相続分の指定(902条)であるとともに、遺産分割方法の指定(908条)と考えられます。これに対して割合等により指定される全部包括遺贈は、相続分の指定のみと考えられます。特別受益者の相続分については、基本的には持ち戻して相続分を計算しますが、被相続人が遺言によってその適用を排斥できます(免除できます)。(903条③)(遺留分の排斥はできません。)

  相続債務についての相続分の指定について

指定相続分が法定相続分より少なかったとしても、相続債権者から(指定相続分より多い)法定相続分に従った相続債務の履行を求められたときには、相続人はこれに応じなければなりません。(法定相続分より少ない)指定相続分に応じて相続債権を承継したことを主張できません。これは、相続分の指定が相続債権者の関与なく(遺言で)なされるものであるからその効力が相続債権者には及ばないと考えるためです。相続債権者が指定分を承認し、その指定分を請求することを妨げるものではありません。

 

法定相続分(900条)

法定相続分とは、民法が定める相続分のことで、相続分の指定がない場合は、各相続人の相続分は民法が定める法定相続分になります。

具体的には下表のとおりです。

ケース 相続分
配偶者と子

配偶者1/2  子1/2

(子が複数いる場合:均等)

配偶者と直系尊属

配偶者2/3  直系尊属1/3

(直系尊属が複数いる場合:均等)

配偶者と兄弟姉妹

配偶者3/4  兄弟姉妹1/4

(兄弟姉妹が複数いる場合:均等)

(半血兄弟姉妹は全血兄弟姉妹の1/2)

配偶者がいない場合 各相続人均等
 代襲相続人がいる場合

 被代襲者の相続分

(代襲相続人が複数いる場合:被代襲者の相続分をその代襲者で均等)

(被代襲者が複数いる場合:その被代襲者ごとに計算)

 

特別受益者の相続分(903条)

相続分の前渡しとみられる生前贈与などを受けている者がいる場合、それを考慮しないで相続分を計算したのでは、生前贈与と相続の二重に財産を受けることになり、相続人間の公平に欠けることになってしまうため、民法は、この利益を持ち戻して計算することを規定しています。この特別受益者が相続放棄をした場合は、二重に財産を受けることにならないため、持ち戻し計算の対象にもなりません。このように持ち戻した特別受益の金額を加えたみなし相続財産の額を、指定相続分や法定相続分で割り、各共同相続人の相続額(相続分)を算出し、そこから持ち戻し計算をした特別受益額を控除した額が、特別受益者の具体的な相続額(相続分)となります。

特別受益の対象となるのは、婚姻・養子縁組のためもしくは生計の資本として受けた贈与(903条①)で、婚姻養子縁組のための贈与は、持参金や持参財産支度金などで、結納や挙式費用などは含みません。生計の資本としての贈与は、生活資産状態などによってさまざまですが、事業資金や高等教育費用なども広く含まれます。

  特別受益額が相続分を超える場合

ここで問題となるのは、特別受益額が相続分を超える場合、計算上ではマイナスとなってしまいますが、その場合民法では返還させる規定はありませんし、実際にも返還されることはありません。ではそのマイナス分は誰の負担となるか?他の相続の負担になります。

実際の計算方法は、民法には規定がありませんが、特別受益の903条を適用して出てきた各共同相続人の財産の取得額の割合に応じてそのマイナス分を計算するのがよいでしょう。

  生命保険と特別受益額

生命保険金は、契約上当然に受取人の財産で、特別受益にはあたらないのですが、判例で、受取人と他の受取人との間の不公平が到底是認できないほど著しいといった特段の事情がある場合には903条を類推適用すべきとしたものもあります。

 

寄与分(904条の2)

寄与分とは、共同相続人中に、被相続人の財産の維持または増加に、特別の寄与貢献をした相続人があるとき、その寄与に相当する額の財産を取得させるもので、相続人間の実質的公平を意図したものです。

共同相続人中の意味は

共同相続人中のうち欠格者、廃除者、相続放棄者は、相続人の資格がないので、寄与者とはなり得なません。また包括受遺者についても、相続人ではないので、同じく寄与者にはなりえません。ただし、それぞれの者が、個別の財産的請求権を持っていればその財産的請求ができないわけではありません。

特別の寄与とは

通常の寄与と区別して、通常の夫婦間の協力扶助や親族の扶養義務などで通常期待される程度の寄与ではなく、法定相続分では不公平と考えられる程度の特別な寄与が必要です。

 寄与の態様

①被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付 ②被相続人の療養看護 ③その他の方法 であることが必要です。

①の被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付とは、給料ももらわずに働いていたり、相当の資金を提供したり、借財の返済などをした場合のことです。②の療養看護ですが、誠心誠意、常時奉仕していたとしても、財産上の効果がもたらされたと言えないような場合には、寄与分には該当しません。③その他の方法としては、相続人が資金提供をして取得した財産の名義が被相続人であるような場合のことです。

  遺言と寄与分

遺言事項には、寄与分としては無いので、寄与分を定めたとしても無効となりそうですが、遺贈または相続分の指定という形でその寄与分に報いる方法はあります。