成年後見制度

成年後見のメリット・デメリット

法定後見のメリット

法定後見は名前のとおり、法律に定められているため、その被後見人の利益が強く保護されます。代理権・取消権なども法律や審判により与えられますので、被後見人に対する不正な権利利益侵害に対して、これほど強い味方はありません。法定後見のメリットとして、類似の契約との比較をしてみます。

後見・保佐・補助の各類型

  • 成年後見人は、広範な代理権・取消権をもち、本人(被後見人)は日常生活に関する行為のみ有効にできるにとどまるため、判断能力の不十分さから生じる権利侵害から強く保護されます。
  • 保佐人は、重要な財産(民13①)について同意権、取消権(民13④)を有し、また特定の法律行為には代理権(民876の4①)も付与され、保護の程度は後見の場合より弱いですが、本人の自己決定の範囲は後見の場合より広くなります。
  • 補助人は、本人(被補助人)が申し立てた重要な財産上の行為のうち特定の行為について、代理権(民876の9①)または同意権及び取消権(民17①④)の一方または双方が付与され、保佐よりさらに自己決定の範囲が広くなっています。

財産管理委任契約との比較

  • 包括的な財産管理委任契約をすることにより、ある程度については法定後見に代替できるものもあります。がしかし、当事者間では契約に拘束され従ったとしても、その契約を公示する方法がないため、管理財産の利用や処分について契約場面で、他の相手方に対して委任状や財産管理委任契約で証明したとしても、取引の相手方と認めてもらえないケースも考えられます。
  • 特に、判断能力が無くなってから不動産の売却が必要となった場合には、受任者からの登記申請は認められないため、(判断能力のない本人からの申請は当然できませんから)結局、処分できないことになってしまいます。
  • また当事者間の契約のため、法定後見のような取消権のような強い権限は受任者には認められません。

任意後見契約との比較

  • 任意後見契約は、登記されますが、その登記された以外の権限行使が必要となった場合は、法定後見制度を利用せざる得ない場面が生じてくる可能性があります。
  • また任意後見人には、同意権や取消権はありません。

法定後見制度のデメリット

権利保護と財産処分

法定後見制度の強みである被後見人の権利利益に対する強力な保護は、逆に裏返してみると財産の処分が厳しく規制されてしまい、被後見人にとって必要と思われる財産の処分についても、裁判所の許可が得られない場合には、その処分は出来なくなってしまいます。後見人等の権限でできる行為は、保存、性質を変えない範囲での利用・使用までで、新たな賃貸借契約なども裁判所の許可を得る必要があります。また、後見開始の決定がなされた場合や保佐開始の決定の場合でも同様に、国家資格を失ったり、会社役員を退任しなければならなくなったりします。

被後見人・被保佐人の資格制限

 法人等の役員

  • 取締役・監査役・執行役(会社法)、医療法人の評議員・役員(医療法)、社会福祉法人の評議員・役員(社福法)など

 資格、免許等の制限

  • 医師、薬剤師、歯科医師、獣医師、社会福祉士、介護福祉士、弁護士、司法書士、行政書士、弁理士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、建築士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、…教育職員の普通免許…など

 事業の許可、認可、指定等の制限

  • 警備業者、貸金業者の登録、貸金業務取扱主任者、商品投資顧問業許可資格、金融商品取引業者登録簿登録、宅地建物取引業、宅地建物取引士登録、旅行業・旅行業者代理業登録、ホテル業者の登録資格、風俗営業の許可、古物営業許可、労働者派遣事業の許可…など

 公務員等

  • 国家公務員、地方公務員、国会職員、固定資産評価員など

 その他

  • 成年後見人、保佐人、補助人…現行民法では規定はないが、裁判所により職権で適任者が選任される現行法(民843①)から考えると、成年後見人等の解任事由にあたると考えて良いでしょう。支援する側の人がされる側になってしまったのですから。本人その親族または裁判所の職権で解任し、あらたな成年後見人等を選任することが必要となります。

被後見人の場合のみ制限される資格

 事業上の制限

  • 薬局開設許可、質屋営業許可資格、食鳥処分事業の許可、…など

 その他の制限

  • 印鑑登録…各自治体の条例によるが、印鑑登録証明事務取扱要領により、多くの自治体が、成年被後見人は印鑑登録できず、後見開始の審判があったときは登録を抹消する手続がとられます。
  • 民法上の制限…意思受領能力(民98の2)、代理権の消滅(民111①)、遺言への医師の立会(民973)など