遺言の注意点 |
遺言方式の厳格性
遺言は、要式行為であり、民法の定める方式に則っていなければ、効力は発生しません。(民960条)
現在の一般的な法律行為にかんしては、原則として(もちろん様々な例外はありますが、あくまで原則論としては)、当事者が自由に定めうるものとしています。しかし遺言は、遺言者の死後に効力が発生する特殊性があるため、その真意性や偽造変造防止の観点から、非常に厳しい要式性を求めています。それぞれ遺言の種類と手続のページを参照してください。その要件に該当していない場合は、せっかく書いた遺言書も、効力が発生しないものとなってしまいます。
以前に書いた遺言書は、それぞれの方式の要件にあっていますか?
成年被後見人の遺言
遺言制度のところでも触れていますが、制限行為能力者でも独立して単独で遺言できますが、その制限行為能力者が成年被後見人であった場合、遺言書の作成は、できるのかという問題があります。
一応条文上では、
- 事理弁識能力を一時回復したとき
- 医師2名以上の立会で
単独でなしうる。となっております。またこの際の注意点としては、立ち会った医師が、
- 遺言者が能力を欠く状態でなかった旨を『遺言書に』付記し署名押印
- 同様に、封入する場合には、能力を欠く状態でなかった旨を『封紙に』も付記し署名押印
しなければなりません。実務上では、大変ハードルが高いものとなります。実務上のハードルの高さの理由は、認知症の発症やそのたの理由により後見に付された成年被後見人が『事理弁識能力を一時的でも回復する確率』が極めて少ない難しさです。上記の要件をクリアできれば、普通方式の自筆証書であろうと、秘密証書であろうと、公正証書であろうと、どの方式の遺言書も作成はできるのですが…。また、医師2名以上の証明というハードルも…。
まずは健康で、判断能力のあるうちに遺言作成をしていきましょう。
判断能力が怪しい状態になってからでは、後々、その遺言は遺言者の真意か否かで、もめてしまう可能性も高くなります。
遺言書の訂正
遺言書中の文字を加除その他の変更をする場合、
- その場所を指示し
- 変更した旨を付記し
- 署名
したうえで、その変更した場所に
- 印を押さなければなりません。
つまり、
- 変更した場所に押印
- 変更箇所の特定とその加除を記載の上、署名
この訂正方法です。この訂正ごとの署名が一般的な書類作成上の慣行と異なるところで、つい忘れてしまいそうですね。
以前に書いた遺言書では、訂正ごとに署名していますか?
これから書かれる遺言書では、訂正ごとに署名をしましょう。